日本経済新聞はおたくの味方?

日経新聞が新年早々またやらかしてくれた。

一面コラム「春秋」(朝日新聞の「天声人語」に該当…ってこればっか)でこともあろうに(って言うこともないけど)「らき☆すた」を採り上げたのだ。

短いのでその全文を引用してみる。

先週末、初詣での客でにぎわう埼玉県の鷲宮神社に足を運んだ。日本武尊(やまとたけるのみこと)ともゆかりの深い関東最古の大社。そんな公式の由緒より、若い人には、女子高校生4人組のほのぼのとした日常を描いた人気アニメ「らき☆すた」の舞台と言った方が通りがよかろう。

同名の漫画を原作とするテレビ番組の放映が2年前。4人組の2人がこの神社の娘という設定からファンが訪れ始め、昨年の初詣で客は前年の2倍を超す30万人に。地元ではアニメをあしらった酒やせんべいも発売。今年も参拝客の列は商店街を長く延び、正月限定販売の関連商品には「売り切れ」の文字が並ぶ。

神の門前でアニメとはとまゆをひそめる向きもあろう。しかし日本の寺社は昔から庶民が娯楽に興じ、ストレスを発散させ、悩みや苦しみを和らげる観光と消費の場でもあった(安藤優一郎「観光都市江戸の誕生」)。屋台に茶店、見せ物の小屋。アニメ愛好家が増えればそれを採り入れるのはごく自然な流れだ。

英語や中国語、ハングルで作品への思いをつづった絵馬も目立つ。地元への経済効果は1億円を超すという。アニメなんてと考えていれば人も富も町を素通りしたはず。きょう仕事始めの会社も多い。頭を柔らかく、心を広く。ビジネスの種は無限にある。国の景気対策を待つより早道かも。

これが1月5日の朝刊に載ったのだ。しかも一面の看板コラムに、である。度肝を抜かれた。

冒頭で“また”と書いたが、日経春秋の上記に類した犯行はこれが初めてではない。

実は昨年の北京五輪の際にも、開会式に口パクで歌った少女を採り上げ、それと関連付けて初音ミクについて好意的に触れた。
曇りだらけの蔑んだ眼差しでしか、こういった文化を見ることができないどこぞのテレビ局と比べれば、日経の懐の広さがより際立つ。

初音ミクに関して、日経はこれ以外に複数回紙面で採り上げているのを、自分は目撃したことがある。

他にも春秋は、「綾波レイに思いを寄せる男性は日本に100万人はいるだろう」という驚愕の書き出しで始まるコラムをも執筆し、その尊敬すべき想像力を惜しげもなく披露している。
そしてこの件で更に驚嘆すべきは、綾波レイの人気のほどを調べるため、秋葉原の某ショップへ取材を敢行している点である。

今回も鷲宮神社へ実際に足を運んでいる。

「足で書く」のは記者として一見当然の行為のようだが、そう思うなら天声人語を読んでみて欲しい。“足で”書かれたものというのは意外に少ないことが分かるだろう。大体は築地にある高層ビルの一室で、テレビや他の全国紙を餌に私的妄想を膨らませているに過ぎない、とは言い過ぎか。言いすぎですね、すみません。妄想を膨らませるんじゃなくて、思索に耽っているんです。

それはともかく、この3つの春秋は同一人物の手になるものと見て相違あるまい(そうでないならないで楽しいけど)。一面コラムを担当するとなれば相当のベテラン記者だろうから、年齢の割りにだいぶこういった文化に造詣が深いようだ。

さすがは日経、ビジネスの絡むところその影あり、といったところか。