みたび“リーブ21”について考える
こんな質問をされる機会が、果たしてあるのかどうか分からないが、もしいま、あなたの嫌いな企業はどこのなんという会社ですか? と問われれば、それが浅慮だと分かっていても、間違いなく「リーブ21」と自分は答えるだろう。
前にもブログで書いたが、リーブ21は今年の2月、発毛施術費用の返還を求められた裁判で、ほぼ全面的な敗訴を喫した。
明らかに髪など生えていない(増えていない)のに、4年間に亘って500万円近い費用を客から回収していた。
詳しくはhttp://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080205/trl0802052139004-n1.htm
リーブ21はこの判決について、自社HPで一言も触れなかった。判決は受け入れたものの一方で「必ず生えるとは言っておらず個人差があることは事前に伝えた」「長期のケアを続けたにもかかわらず、結果的に強い不満を持たれた男性の意思を尊重した」と居直り、被害者に一言の謝罪すら無かった。
このときを境にこの会社への印象は急転直下、一変した。
「もう悩み無用♪」などと和田アキ子に歌わせておきながら、あまつさえ悩みを増やしてしまったのではないか。
それはともかく、最近リーブ21の新しいTVCMがスタートした。
リーブ21の岡村勝正社長が「3.4%の課題」と書かれた白いフリップを手に持って、「残念ながら〜」と述べるあのCMである。
リーブ21の施術を受けた顧客のうち、3.4%が満足の行く結果を得られなかった、ということを社長はおっしゃりたいようだ。
3.4%の不満というのは、言い換えれば96.6%の満足であるとも受け取れるわけである。このCMの憎さは、(たった、と言ってしまおう)3.4%の客を満足させられなかったことを重く受け止める姿勢を示しておき、他方で「でも残りの96.6%は満足なんだよ」と暗に誇ることで、2つの好印象を視聴者に与える効果を持つ点にある。
ただ意地悪な想像を膨らませれば、残りの96.6%には「どちらでもない」が大勢含まれているのかもしれないし、そもそもアンケート項目の選択肢が「不満」「やや不満」「どちらでもない」「やや満足」「それなりに満足」「満足」「とても満足」で構成されていた可能性だってある。
加えて指摘するならば、このアンケートというのは選択可能な4つのコースのうち、「全額返金コース」を選んだ人のみを対象に実施されたものであり、それ以外の3つのコースの顧客に関しては調査の枠外なのである。
当て推量だが、「全額返金コース」というのは、読んで字の如く、発毛効果が認められなければ全額を返金することを売りにしたコースなのだから、リーブ21としては他のコースよりも力を入れて取り組むであろう事は、想像に難くない。
まあ単純に考えれば、96.6%という数字は驚くべきものであり、リーブ21としては当然アピールしたい実績ではあるのだろうけれど。
これとあわせてもう1つ。リーブ21が毎年「発毛日本一コンテスト」なるイベントを開催していることは、一般によく知られていると思う。
このイベント、何か不思議な感じがしないだろうか。
そう、いったいどういう基準で何が評価されているのかが全く分からないのだ。
「そりゃ髪の毛だろ」
と早合点するのは安直である。思い出して欲しい。リーブ21の発毛に関しては、3.4%の人間しか不満を感じていないのである。
つまり残りの人間は、発毛に関して何らかの効果を実感していることになる。
調査の対象は3863名であり、そのうち3.4%に含まれた人数は130名だ(いずれもCMが典拠)。この「全額返金コース」を受けた顧客の中だけで考えても、3733名の満足した顧客が存在するのである。その大人数の中からいったいどうやって、グランプリや準グランプリなどを決めていくのだろうか。
加えて、コンテストというのは一般的に「何らかのポイントで他より秀でた人間」が選抜されるものである。そしてその背後に控える大多数の秀でていない人間の存在が、無意識に前提されている。
例えばミス・コンテストの出場者は、大多数の秀でていない女性(ああ、すごく失礼な物言い…すみません)がいるからこそ価値があるのであり、世の中の女性が押しなべて美人で聡明でグラマーならば、そういったコンテストの開催主旨は根底から崩壊するのである。
何が言いたいかお分かりだろうか。つまりそういうことである。
リーブ21は相変わらず施術の費用は秘匿しているし(といっても大体は見当が付くわけだが)、前に触れたように自らの非を認めようとはしないしで、相当に問題、または疑問が多い企業であることは間違いない。
ただ、こんなことは言わなくてもいいとは思うのだけれど、リーブ21の岡村社長が在日朝鮮人であると言い募り、それゆえにこういった詐欺まがいの商法で日本人を謀るのだ、と主張する人がいるが、自分はこういった議論には一切与しない。
岡村社長が在日朝鮮人であるかどうかは定かではないし、かりにそうであったとしても、在日朝鮮人がすなわち犯罪者であるかのような図式に則って騒ぐのは間違っている。
それは圧倒的多数の、真っ当な生活を送る在日朝鮮人への冒涜であり、また民族差別である。
それに、岡村社長がまだ詐欺師だと決まったわけでもないしね。そうとうに怪しいけれど。