MDと専守防衛のコスト
報道によると、ハワイ沖で実施された海上自衛隊のミサイル迎撃実験が失敗に終わったらしい。
この実験には60億円の費用が投じられていたという。その費用が無駄になってしまいましたね、と言わんばかりのメディアがある。あまつさえ、MD、ミサイル防衛構想それ自体の正当性まで揺らいだ、と早合点したところもあった。
まったく、日本のメディアの軍事音痴は湾岸戦争の頃から変わらないと見える。陸上で使う軍事車両はすべて戦車で、軍艦はおしなべて戦艦と呼び、軍用機は総じて戦闘機だ。
こんな横綱ばかりの軍隊ではまるで戦争にならないわけだが、それはともかく。
実験は失敗だったが、そこから得るものは小さくないだろう。ましてやこれは実験である。来ないことを祈る本番で失敗されるよりずっとましだ。
練習試合で何遍勝っても、本番で負ければ意味は無い。
ただ今後の迎撃実験で失敗が続くようだと、日本のミサイル迎撃網は肝心の抑止力を失ってしまう。なのでこれからは頑張って欲しい。
まあ北朝鮮が暴走して国家からテロリストになったら、抑止もへったくれもないんだけれど。
このMDには兵器体系それ自体の有効性に疑義が呈されてきた。敵のミサイル基地へ先制攻撃をしかけたほうがより低コストで効果も高いと、こういう見解もある。
これはおそらく正しい。ただ日本は「専守防衛」の旗の下、こういった「攻撃的」または「侵略的」な兵器を保有しないという大方針を堅持している。
専守防衛を貫きつつ国土を守るというアクロバティックな芸当を具現化した戦略の1つが、このミサイル防衛だ。
この専守防衛の思想は、戦争をしない軍隊である自衛隊とともに、日本の平和主義(憲法第9条)のコアとなる考え方と言える。
日本の国防体制の軸は、専守防衛とそれを身を以って体現する自衛隊の存在である。
平和主義を守り抜きたいのなら、自衛隊は戦争をできないままにしておかねばならず、もちろん専守防衛の旗も掲げ続けなければならない。
何が言いたいかといえば、MDへの批判はこの専守防衛を否定する立場と紙一重だという点だ。
もちろん非武装中立主義の方々は論外だが、そうでない人たちは、それを承知した上でMDへ異議を申し立てているのだろうか。
そこが少しだけ気がかりである。確信犯だったりするのか。
もっとも、日本のメディアなんて脊髄反射的に反権力のポーズを取る有象無象ばかりだから、なーんにも考えちゃいないんだろうけど。
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取り急ぎこれらの本を読んで、勉強しましょう。日本最高の軍事評論家、江畑謙介さんの手になる書物です。