オバマ新大統領
一時の熱気も随分と冷めてきたアメリカ大統領選挙。肝心の新大統領が決まったのだからそうなるのは自然なことだが、今回の大統領選挙と、そしてバラク・オバマ新大統領誕生の意味を考えるには、やはりこうして周りが少し落ち着いてからの方がよい。なんて。
アメリカ大統領選挙は、1ヶ月やそこらで終了する日本の総選挙と違い、予備選を含めて約2年という長丁場で候補者同士がしのぎを削る。
日本の選挙が民放の単発テレビドラマだとすれば、米大統領選挙はさしづめNHKの大河ドラマと言ったところか。
それはともかく、アメリカを中心として世界中の注目を集めながら、このような長い期間にわたって壮絶な死闘を繰り広げるというのは、尋常ならざることである。
日本でもたびたび報道されていたように、本選に立候補した民主党のオバマも共和党のマケインも、当初はヒラリーやジュリアーニの後塵を廃し、有力とはみなされていなかった。
「風」という表現がよく使われる。オバマにはまずヒラリー憎しの風が吹き、次いで金融危機という大風が吹き荒れた。
確かにグルジア紛争がもっと後に起こっていれば、マケインが勢いを盛り返してオバマは窮地に陥っていたかもしれない。その点では運が良かったと言えなくもない。
しかしオバマはこの風だけで勝利を呼び込んだわけではない。風だけで勝利が舞い込むほど、アメリカ大統領選挙というのは甘くは無い。
ヒラリーやマケインとの度重なる激戦を制したのは、オバマ自身への経験不足という批判を補ってなお余りある彼の政治家としての底力、そしてスタイルであったろうし、またインターネットをうまく活用して支持者のネットワーク化を図り、全米に網の目のように張り巡らされた選挙組織を作り上げた。その組織の活動を支えたのも、Webサイトで簡単に行える献金システムの構築に成功したからというのが、要因として大きいのだろう。
こういうオバマ流の手法、そして政治家としての素質は、もう少し評価されてよいと思う。
建国以来始めてアフリカ系アメリカ人の大統領が誕生する。アメリカは人種の壁を越えたのだろうか。
差別意識があからさまに表明されるような機会は減ったのだろう。ただアメリカはプラグマティズムの国である。自国が直面する未曾有の危機を眼前にしてはその克服が最重要であり、それを成し遂げてくれるのなら黒人でも構わない、とそう考えたのかもしれない。
だがそういう側面があったにしても、人種の壁がまた一段と低くなったことはまず間違いない。
バラク・オバマ新大統領。彼が、アメリカ、そして世界をいずこに導くのか。そして日本との関係はどう変化するのか。大いに注目したい。