君子豹変す

10月3日解散同月26日投開票と噂されていた衆議院選挙の日程は、にわかに立ち上がってきた金融危機の影に消し飛んだ。

選挙のスケジュールはズレにズレ込み、今や越年まで囁かれる事態となっている。

今か今かと解散総選挙を待ち侘びている民主党は、ここにきて自民党と完全に歩調を合わせ、一刻も早い麻生首相の決断を期すべく、その環境づくりに手を貸す始末である。

参議院比較第1党という権力をこれ見よがしに利用し、あれほど頑強に抵抗したテロ特措法の審議にも、あっさり応じる姿勢という。

法案の内容は前年となんら変化が無い。変わったのは選挙が近いという政治環境だけだ。このことは、民主党が政局を第一義に考え、実際の法案の中身や日本が置かれている国際状況にはほとんど関心が無いことを雄弁に物語っている。

廃止を求めていた証券優遇税制の延長にも応じるという。極めつけは日銀副総裁人事だ。政府の人事案をすんなりと受け入れる方針というのは、聞いて呆れる。

半年前のわがままぶりはどこへやら。いつになく素直なことだ。

今ならば道路特定財源一般財源化を延期しても、はては憲法改正を発議しようとも、民主党は反対しないだろう。

選挙しか頭に無いような、こんな鵺(ぬえ)みたいな政党を政権の座に就けてはいけないのじゃないか。


一方の自民党も、その感性の鈍り様は尋常ならざる域にまで達している。

選挙が延びているのはあたかも金融危機とそれに伴う国内の景況感悪化が原因であるかのように与党の政治家は言うが、それはもちろん嘘である。

本当の所は、国民的人気のある麻生首相を担ぎ出しても、もはや衆院選での勝利は叶わないことが明らかになった点にある。

麻生太郎を以ってすれば選挙を乗り切れると本気で考えていたならば、自民党も今や終局を迎えつつあると言える。

もともと日本は金融危機の影響が先進国でもっとも軽微だったはずだ。あまつさえ野村証券は、破綻したリーマン・ブラザーズの欧州部門・アジア部門を買収したではないか。

国内景気が下向きだとすれば、それは折からの原油価格や穀物価格の高騰によるもので、金融危機とは無関係だ。今日成立した補正予算も、それらへの対策に重点を置いている。

自民党は降って沸いた金融危機を隠れ蓑として、選挙を先送りせんと画策しているに過ぎない。


しかし何はともあれ、選挙の日程が気になるところではある。


今こそ読むべき本↓

自民党政治の終わり (ちくま新書)

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タイトルの時宜に適うこと、驚嘆すべし。

だれが日本を救うのか (新潮文庫)

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政治ジャーナリズムの罪と罰 (新潮文庫)

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日本最高峰の政治ジャーナリスト、田勢康弘氏の手になる著作。電波芸者と成り果てた三宅久之氏や福岡政行氏とは段違いの鋭い視点。