伝説が終わり、歴史が始まる
高齢に差し掛かる現職の国会議員たちが、次々と国政からの引退を表明している。これもやはり総選挙が近いことの証左なのだろう。
小泉純一郎元首相が次の総選挙に出馬しないだろうという憶測は、様々な所で以前から飛び交っていた。そして、そのようになった。
1年や2年で辞める総理が大多数だった近年の日本政治史において、彼は都合5年5ヶ月に亘ってその任を務めた。
今次の経済政策が小泉路線の継承か否かで語られるように、後世へ与えた影響は極めて大であり、彼が総理の座から降りた後も、この国では未だに“小泉時代”が続いているかのような印象を受ける。
一方では稀代の名宰相と謳われ、他方では格差社会の元凶と罵られる。
この毀誉褒貶の激しさも、彼が戦後政治史に画する首相であったことの証しだ。
しかしいかなる事物であっても、それを全て肯定し、また否定してしまっては、おそらくその実像に近づくことは出来ない。
政界からの引退を決めた今だからこそ、冷静に小泉政権というものを再検証してみる必要がある。
政治家やマスコミに限らず頻繁に人口へ膾炙する“小泉構造改革”というキーワード。
いかなる理念の下、どのような政策が打ち出され、実行され、そしてその結果日本社会はどう変わったのか。
ぼくたちはあまりに印象で物事を語り過ぎている。次の政権にうつつを抜かして事後の検証を怠り、マスメディアによって不自然に拡大された像を鵜呑みにした。幾重にも重なる分厚いイメージの層が形成されて、そのイメージを基に言論が展開される。必然的に世論をミスリードしてしまう。人間はイメージをもとに思考するとしても、そのイメージはできるだけ正確なほうがよい。
小泉政権の功罪を1つ1つ丁寧に解き明かしていく作業が要る。
といっても自分でやるのは面倒だから、こういう場合は優れた書物に頼るのがもっとも手っ取り早い。前にも紹介したが…
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この書籍から入り、他の文献に手を広げていくのがベター。
ぼく自身、小泉政権については評価したい点も多々あるし、逆に批判されても仕方ないと思う所も少なくない。
しかし何だろう。いざ政界を引退すると聞けば、少し寂しい気もする。