やるべきことをしない人々

政治家の政局好きというのは、まことに度し難いものらしい。それはわからないでもない。私でさえ、政局が緊迫していく様をメディアで見ていると血湧き肉踊る、ウキウキワクワクするものだ。

しかし今は、政局を作り出そうということよりも、まずすべきことがあるはずだ。以下の新聞記事をご覧いただきたい。

民主党鳩山由紀夫幹事長は21日昼、海上自衛隊のイージス護衛艦と漁船の衝突事故を巡る石破茂防衛相の責任に関して「お辞めになるべきだ」と強調した。そのうえで「参院での最後の手段として問責ということは十分考えられる話だ」と述べ、防衛相が自発的に辞任しない場合は問責決議案提出も検討する考えを示した。首相官邸町村信孝官房長官に沖縄の米兵による事件の再発防止策を申し入れた後、記者団に語った。

鳩山氏は事故について町村氏に「防衛相の責任は重い」と強調。町村氏は「まだそんな段階ではない」と述べるにとどめた。同席した国民新党亀井久興幹事長は記者団に「(石破氏が)トップにふさわしいのかどうか大いに疑問を持っている」と指摘。問責について「状況次第だが、十分視野に入ってくる」と述べた。

社民党も同日午前の常任幹事会で防衛相の辞任を求める方針を決めた。

言うまでも無く、海上自衛隊あたご型護衛艦が千葉県沖で漁船と衝突し、漁船が沈没した事件についてのものだ。

今回の一件については、防衛省自衛隊の説明が二転三転している。それによって事件の原因というものが一向につかめず、漁船乗組員の関係者を一層憤らせているという状況である。

ここにおいて政府がまずなすべきは、現在も行方不明である2人の乗組員の発見に全力を尽くすことであるが、それと同等かあるいはそれ以上に重要であるのは、事故の原因を早期に解明し、再発防止に万全を期すことだろう。

しかし今回のこの対応である。

石破防衛相に責任があることは間違いない。しかし、事故が発生したことに対する責任もさることながら、その原因を突き止め広く国民へ、特に今回の被害者の方々へ速やかに公表し、今後このようなことが起きないように万全の対策を講じる責任も同時にあるだろう。

どちらの責任を先に果たすべきか、それは火を見るより明らかである。


それに関連してここで何より問題にしたいのは、上記の新聞記事にあるような野党の対応である。

いま野党がすべきことは、防衛省がなにやらひた隠しにしているかのようにも見える事故の原因について、それを徹底的に究明するよう彼らへ要請することではないのか。それが遅々として進まないのなら、その理由を追求して発破をかけるべきだ。

石破大臣を更迭したところで、事態が好転するのか。

私はしないと思う。

事故原因の解明が済み、大臣への責任の所在がつまびらかになってから始めて、進退問題についてうんぬんすべきだろう。再発防止策をまとめてからでもいいが、それは後任に任せてもよい。むしろそのほうが望ましいかもしれない。

防衛相の辞任は、それからでも決して遅くはあるまい。


まったく今回の事故に対する野党の対応は、見ていて呆れ返るほどだ。被害者の方々の悲痛な表情を見て、そして心からの叫びを聞いて、真っ先に思い浮かぶことは大臣の更迭なのか。

この人たちは、政治家というよりも政治屋と呼ぶにふさわしい。真剣にこの国、国民を思うならば、大臣を更迭しろなどと、この時点では口が裂けても言えることではない。

まず原因の解明、これが先決だ。


こんなにも政治家(屋)が愚かに見えたのは久しぶりである。虫唾が走るとはまさにこのことだ。