なんだか不愉快なCM 

この怒りを何者(物)かにぶつけて今すぐに発散したい、っていうほどのものじゃないんだけど、なんだか心に引っかかる不愉快さ、というものを表象したCMがいくつかある。

その筆頭に挙げたいのが、上戸彩が主演するソフトバンク(正確にはソフトバンクモバイル。面倒なので以下、ソフトバンク)のCMだ。勘違いしないように言っておくが、北大路欣也が声をあてる柴犬や、糸井重里の奥さんも出てくる「家族編」じゃない。

どういうものかというと、上戸彩ソフトバンクショップ店員の制服を着込み、携帯電話を持ちながら「ぷぷぷ、と鳴ったらソフトバンクです!」と元気な声で話し、相手がぷぷぷと鳴らして出るや否や精一杯の笑顔で「ソフトバンクに変えたんだね!」と答える、あれである。

ぼくは「なんだか嫌い」というのがあんまり好きじゃないので、この不愉快の原因をがんばって解明してみたいと思う。


不愉快の発生源が上戸彩にあることは間違いない。あのCMは彼女以外に誰も出演しない。まだ見ぬ孫正義(あるいはソフトバンク自身)を髣髴し怒りを感じるなんてことはぼくにはないから(というかぼくは孫さん自身はけっこう好き)、やっぱり上戸彩が悪い。

ではどこがどう悪いと言うのか。おそらくぼくは無意識に、目が死んでいる典型的なアイドルの愛想笑いとは無縁の、目がちゃんと細まり上に少し吊り上る「ちゃんとした可愛い笑み」を演出しながら「ソフトバンクに変えたんだね!」と言い放つ上戸彩の表情と台詞から、「もしソフトバンクじゃなかったら彼女はどんなに悲しそうな顔をして、どんなに寂しそうな声を出すのだろうか」とふいに感じてしまっているのである。

ぼくは残念ながらソフトバンクユーザーではない。故に、彼女の演技から言外の含意を感じ取り、それを咀嚼しもう1つの逆のシナリオを作り上げて勝手に申し訳なく思うのである。「ごめん、ソフトバンクじゃないんだ・・・」と。

このCMは、そういった感情を観る者に生じさせかねないのだ。

だがこれがなぜ不愉快なのか。これは上戸彩自身に内在する不愉快成分が成せる業なのかもしれない(結局それかよ)。

しかし想像して欲しい。もしあのCMに出演しているのが美輪明宏だったらということを。あなたは彼の様子から、

ソフトバンクじゃないんです・・・」

「あら。なら仕方ないわね」

こういうプロットを間違いなく思い描くはずだ。つまり美輪明宏は、相手がソフトバンクじゃなくてもちっとも落ち込まない。付言すれば、おそらく根に持つことも無い。きれいさっぱり忘れてくれるだろう。

しかし上戸彩は違う。彼女はもうある意味ではちきれんばかりのがっかりさを、小さな顔一杯で表現するに決まっている。そして後々まで、相手はそのインパクトを引きずり、上戸はしかもそのときのことを後々まで絶対に忘れない、そういうイメージがある。加えてそんなことを彼女にさせてしまったら、「自分はなんて悪いやつなんだ!」と自己嫌悪に陥ってしまう、そんな雰囲気も持ち合わせているのが上戸彩なのだ。

視聴者(といっても私だけだが)にこういう感情を抱かせてしまった点で、このCMは失敗だ。


上戸彩は好きでも嫌いでもなかった。どちらかと言えば針がやや嫌いに傾く、といった程度だろうか。さして意識もしていなかったが、もし大河ドラマに出演するなら、それは御免蒙りたい(たしか「義経」に出演していた。あのドラマも、魅力溢れる脇役陣の演技を、タッキーの大根演技と彼及び石原さとみの非時代劇的な雰囲気が見事に帳消しにしていた感がある極めて残念な作品だった。滝沢秀明石原さとみ自身には好感を持てるんだがなー)。


なのだが今回の一件で、私は上戸彩がどうやら嫌いであることが分かってしまった。そして美輪明宏は好きだということも同時に理解してしまった。


ソフトバンクのCMは、前にもいささか問題になったことがある。たしかテニス部の女子高校生(もしくは中学校)たちが、ソフトバンクユーザーではない友人にそっけない態度を取るって感じのCMだったと思う。

こんなのは何の問題も無い(むしろそんな表現に過剰反応する感性のほうが危険。まあぼくもだけどね)が、といって今回挙げたCMが何か社会通念的に問題を抱えているというわけでは全くなくて、ただちょっとばかし不快な感じがしましたって、ただそれだけ。



上戸彩のファンがいらっしゃいましたら、伏して(伏せないけどさ)お詫び申し上げます(でも好き嫌いなんて人それぞれだよね)。