リーブ21訴訟、和解の報

まずはこの朝日新聞の記事をご覧ください。

「必ず毛が生える」との勧誘を信じ、育毛ケアを4年間受けたのに効果がなかったとして、大阪府内の男性会社員(58)が業界最大手「毛髪クリニック リーブ21」(大阪市)に対し、施術代や慰謝料など860万円の損害賠償を求めた訴訟が大阪地裁(平林慶一裁判官)で和解した。同社が施術代の約9割にあたる430万円の解決金を支払うことで合意した。

 訴状によると、男性は01年4月、同社に「頭頂部が薄くなって久しい」と相談。担当者から「大丈夫。必ず生えてきます」「発毛には3年かかる」などと言われて契約した。高周波治療器などによる頭皮への「発毛促進サービス」を05年5月まで週1回2時間のペースで受け、施術代約490万円を支払った。サプリメントなどの補助食品も190万円分買った。

 しかし、実際には細い毛が少し生えただけで、男性は「頭頂部は光ったまま。効果はほとんどなかった」と主張。「必ず生える」と勧誘したことは、消費者契約法が契約を取り消せる理由に定める「断定的判断の提供」にあたると訴えた。

 同社は訴訟で「必ず生えるとは言っていない。発毛に個人差があることは事前に伝えていた」と反論したが、地裁の和解勧告に従って昨年9月に和解を受け入れた。

 同社の広報担当者は「発毛効果はあったと考えているが、サービスが長期に及んだことや、ご本人の強い不満を考慮した」と話している。

ちなみに山形新聞のWebサイトには、男性会社員の頭頂部写真が掲載してあります。
http://yamagata-np.jp/media/cnnews/txt/CNnews_ad.php?kate=National&no=2008020501000905


さて、この訴訟はいかに考えるべきでしょうか。

記事を読んで気づいた点は4つ。

1.430万円が施術代の約9割。つまり施術代は、500万円近い金額だということになりますね。男性は4年間処置を受けていたそうですから、1年間あたり百数十万円ほどの費用がかかったということになります。

2.男性の髪の毛は、どうがんばっても目を凝らしても増えているようには見えない。

3.発毛に個人差があるとかリーブ21は言ったそうですが、そんなの当然。客としては、生えるか生えないかが重要。客に何百万円も払わせるなら、それ相応の信頼性を保証すべき。

4.裁判所が出した和解勧告の内容を見る限りでは、実質的にリーブ21のほぼ全面的な敗訴。


リーブ21のサイト、そのどこを見回しても、具体的な施術料金は少しも分からない。つまりリーブ21へ直接に赴いてみるまでは、実際の費用が不明なわけですね。開けてびっくり玉手箱。聞いてびっくりリーブ21。まったく行くまで分からないなんて、銀座の寿司屋か(わたしは行ったことありませんが)。

もちろん、発毛には個人差があるそうですし、施術の仕方も変ってくるでしょうから一概には言えないかもしれませんが、にしてもちょっとセコイ。

ここでしっかりと強調しておきたい。同社は有名タレントを自社TVCMに起用し、彼らに「発毛には個人差がある」されど「髪が生えてくる」と大々的に宣伝させているのです。

男性の写真を見てみましょう。髪の毛、生えてませんよね。産毛が生えたそうですが、それでは何の意味もありません。傍目から見て明らかに増量していることが、重要なのです。




余談ですが、リーブ21の社長さんは「発毛施術おすすめの方針」において、こうおっしゃっております。

(略)
しつこい電話や無理な勧誘、

また、訪問販売などは一切いたしません。
(略)

略させていただいた箇所には、まっとうなことが書いてあります。しかし、抜粋いたしましたこの文章、これはどう解釈すべきなのか。

電話で勧誘…

「あなた、薄毛でお困りでは?」

「失礼ね!」

訪問販売…

「頭頂部に、荒涼たる大平原が広がりつつあるとお見受けいたしました。それを緑の草原に変えてみませんか?」

「余計なお世話だ!」


てことになりませんか? 電話や訪問といった営業活動を実施したら。こんなことをしないのは、というかむしろできないことを、わざわざ書く必要があるのでしょうか。




頭髪が薄いというのは、当人にとっては本当につらいことでしょう。「頭頂部が薄くなって久しい」なんとも哀愁漂う言葉ではありませんか(ここで少し笑ってしまいました)。

それを、あろうことか髪が生えてくるとうそをつき(結果的にはそういうこと)、大金を搾取し、自らの過ちを認めるどころか、裁判所が和解を勧告するまでふんぞりかえっているとは。しかし今も、決して反省しているわけではないのですよね。陳腐な言い方で恐縮ですが「人の弱みにつけこむ」とは、こういう行為を評して言うのでしょう。

それにしても、4年間も処置を継続していたのなら、途中で見込みなしと気づかなかったのでしょうか。


この裁判の結果は、重く受け止めたほうがいいでしょうね。ただでさえ、その高額な施術費用が世間の明るみに出てしまったのです。加えて、今回のケースは一切効果が無かったのですから、イメージダウンは避けられません。

リーブ21の宣伝を全て信じる気にはなれませんが、しかしその処置に効果があることは確かなのでしょう。あれだけ大々的に広報をしているのですから。

世の薄毛に悩む人々のため、今回の件を真摯に反省し、より明快な料金体系、それと合わせての明確な頭髪増量の判断基準などの作成を通して、今後も企業努力を怠らないようにと切に願います。

被害者をこれ以上増やすことのないように。